ボクたちが愛した、想い出のレトロパソコン・マイコンたち
ノートパソコンよりも小さなNECのHANDY98「PC-98HA」
2025年5月27日 08:05
想い出に残る、懐かしのマイコン・パソコンを写真とともに振り返る本コーナー。今回取り上げたのは、NECが1990年10月中旬に発表したハンディパソコン、愛称・HANDY98ことPC-98HAとなります。
1989年11月に登場した、NEC初となるノートパソコンのPC-9801N(愛称・98NOTE)は、さまざまな方面に影響を与えます。その後は、CPUが速くなったPC-9801NSや、レジューム機能を搭載したPC-9801NVなどがリリースされましたが、A4ファイルサイズで3kg弱の重量というのは変わりませんでした。
そんな時代でしたが、当時の雑誌を見るとNECがユーザーのニーズとして感じていたのは「98NOTEよりも小型・軽量」だったとのことで、その流れを汲んで1990年10月中旬に発表されたのが、PC-98HA(愛称・HANDY98)です。一般向けに初めて公開されたのは、1989年10月18日から20日にかけて池袋サンシャイン・コンベンションセンターにて開催されたNECパソコンフェア'90で、イベント中に行われたHANDY98体験セミナーは常に超満員だったと書かれていました。
本機は、これまで最小だった98ノートよりも更に小さく、幅234mm×奥行き148mm×厚み36mmとA5ファイルサイズを実現していて、まさに手のひらサイズのハンディパソコンでした。重量も、PC-9801Nが約2.7kgだったところをPC-98HAは半分以下の約1.1kgを実現。驚くべき小型軽量化に成功していました。
スペックとしては、CPUにクロック周波数10MHzノーウェイトのV50を採用して、搭載しているメインメモリは640KBytesで、さらに1.25MBytesのRAMドライブを装備しています。内蔵のROMドライブには、MS-DOS Ver.3.1とフロントエンドプロセッサ・NEC AIかな漢字変換用辞書、N88-日本語BASICが収録されていて、さらに統合ソフトのMS-Worksも添付されていたので、購入すれば即座に活用することが出来ました。
機種名が示すように、基本的なアーキテクチャはPC-9801シリーズではなく、PC-98LT互換となっています。発売価格は198,000円で、本体+MS-DOS+MS-Worksという似たような構成で当時の実勢価格を調べると、PC-9801Nでは20万円ほど、PC-9801NSでは28万円ほど、PC-286BOOKは25万円ほど、PC-386 note Aは36万円ほどとなっていたので、それらよりも安く、そして軽くて小さいという特徴があったと言えるでしょう。
搭載しているモニタは2階調のモノクロ液晶ディスプレイで、バックライトは持っていません。ただし、180度近くまで開くことができるため、室内の明かりがあれば十分視認することができます。コントラスト調節つまみもありますが、実用的な範囲はほぼわずかでした。
内蔵のバッテリーは1.5時間でフル充電することができて、そこから連続7時間の稼働が可能です。オプションのバッテリーパックを併用すれば、実に13時間も使用できました。フロッピーディスクやバックライトで電気を食われないとはいえ、この時代にこれだけの時間バッテリーが持つのは特筆すべき事で、外出先で使うときにバッテリーの残り容量のことを考えないで済むのは心強く思えたものです。もちろん、今ではバッテリーがへたっているため役に立ちませんが……。
キーボードはキーの上部を支点にして、手前側を押し下げるようにして入力する方式を採用しています。しっかり押さないと反応してくれないほか、キーボードを見ずにタイピングするのは非常に難しく、左右の人差し指や中指2本を使って入力するのがやりやすいかもしれません。
起動すると、メモリカウントの後にPC-98HAスケジューラの画面が表示され、ここから添付のメモリカードを使ってMS-Worksを本体にインストールしたり、スケジュールを記入する作業を行います。動作速度が少々もっさりとした感じなのは致し方ないとして、それを除けばロード時間を感じることもないため、それなりに快適に作業ができました。
レジューム機能にも対応しているので、出先で進めた仕事の続きを戻ってからシームレスに行う、といったことも問題ありません。ただし、バッテリー残量を確認する手段は用意されていないため、ユーザー自ら使用時間をある程度把握しておかないと、いつの間にか電源が落ちて保存していなかった作業内容がパーに……という状況に陥ってしまうこともありました。
保存した各種データは、ドッキングステーションに挿入したFDを介して98NOTEやデスクトップ98に持ち出すことができたほか、MS-DOSの知識などがあればRS-232Cインタフェースを利用しても同じことが可能です。その際には、PC-98マシンと接続するためにPC-98HA側が14ピンのRS-232Cリバースケーブルが必要となりますが、価格は4,800円でした。
『SUPER大戦略HA』といったPC-98HA用のゲームソフトも登場しましたが、残念ながらPC-98LTと同じく本流にはなることなく、PC-98の歴史からは静かにフェードアウトしていくことになります。