ボクたちが愛した、想い出のレトロパソコン・マイコンたち

ノートパソコンよりも小さなNECのHANDY98「PC-98HA」

実際に、手のひらに載るくらいの大きさで、当時としては非常に小さなモデルでした。これは、ドッキングステーションと合体させた状態での写真で、縦の長さが約2倍になっています。

 想い出に残る、懐かしのマイコン・パソコンを写真とともに振り返る本コーナー。今回取り上げたのは、NECが1990年10月中旬に発表したハンディパソコン、愛称・HANDY98ことPC-98HAとなります。

最初の広告ではフリッパーズ・ギターがイメージキャラクターを務めていましたが1度きりの出演で終わり、次からは代わって大江千里さんがイメージキャラクターとなりました。キャッチコピーは「ハンディパソコンといえば、ハンディ98です」。

 1989年11月に登場した、NEC初となるノートパソコンのPC-9801N(愛称・98NOTE)は、さまざまな方面に影響を与えます。その後は、CPUが速くなったPC-9801NSや、レジューム機能を搭載したPC-9801NVなどがリリースされましたが、A4ファイルサイズで3kg弱の重量というのは変わりませんでした。

 そんな時代でしたが、当時の雑誌を見るとNECがユーザーのニーズとして感じていたのは「98NOTEよりも小型・軽量」だったとのことで、その流れを汲んで1990年10月中旬に発表されたのが、PC-98HA(愛称・HANDY98)です。一般向けに初めて公開されたのは、1989年10月18日から20日にかけて池袋サンシャイン・コンベンションセンターにて開催されたNECパソコンフェア'90で、イベント中に行われたHANDY98体験セミナーは常に超満員だったと書かれていました。

本体の大きさが分かるよう、比較対象として3.5インチFDと一緒に撮影してみました。非常に小さく、また単体であれば画面がほぼ180度近くまで開くようになっています。手前右下にはリセットスイッチがあり、爪楊枝など先が細いもので押すとリセットできました。画面の右側には、コントラスト調節つまみがあります。

 本機は、これまで最小だった98ノートよりも更に小さく、幅234mm×奥行き148mm×厚み36mmとA5ファイルサイズを実現していて、まさに手のひらサイズのハンディパソコンでした。重量も、PC-9801Nが約2.7kgだったところをPC-98HAは半分以下の約1.1kgを実現。驚くべき小型軽量化に成功していました。

 スペックとしては、CPUにクロック周波数10MHzノーウェイトのV50を採用して、搭載しているメインメモリは640KBytesで、さらに1.25MBytesのRAMドライブを装備しています。内蔵のROMドライブには、MS-DOS Ver.3.1とフロントエンドプロセッサ・NEC AIかな漢字変換用辞書、N88-日本語BASICが収録されていて、さらに統合ソフトのMS-Worksも添付されていたので、購入すれば即座に活用することが出来ました。

PC-98HAを購入すると、本体の他にMS-WorksとACアダプタ、そしてそれらを収納することができるセカンドバッグが付いていました。ドッキングステーションも単体で撮影しましたが、こちらの価格は5万円となっています。

 機種名が示すように、基本的なアーキテクチャはPC-9801シリーズではなく、PC-98LT互換となっています。発売価格は198,000円で、本体+MS-DOS+MS-Worksという似たような構成で当時の実勢価格を調べると、PC-9801Nでは20万円ほど、PC-9801NSでは28万円ほど、PC-286BOOKは25万円ほど、PC-386 note Aは36万円ほどとなっていたので、それらよりも安く、そして軽くて小さいという特徴があったと言えるでしょう。

 搭載しているモニタは2階調のモノクロ液晶ディスプレイで、バックライトは持っていません。ただし、180度近くまで開くことができるため、室内の明かりがあれば十分視認することができます。コントラスト調節つまみもありますが、実用的な範囲はほぼわずかでした。

本体背面には、ドッキングステーションと接続するための拡張バスコネクタ、その右側にバッテリーケース用のコネクタと電源用コネクタが並んでいます。本体底面右下に見えるネジを外すと、そこにはバッテリーが収納されています。

 内蔵のバッテリーは1.5時間でフル充電することができて、そこから連続7時間の稼働が可能です。オプションのバッテリーパックを併用すれば、実に13時間も使用できました。フロッピーディスクやバックライトで電気を食われないとはいえ、この時代にこれだけの時間バッテリーが持つのは特筆すべき事で、外出先で使うときにバッテリーの残り容量のことを考えないで済むのは心強く思えたものです。もちろん、今ではバッテリーがへたっているため役に立ちませんが……。

左側面は奥にRS-232Cコネクタ、手前がプリンタポートと並んでいます。どちらもPC-98HA専用の特殊な形状となる14ピンコネクタを採用していました。その手前側にはカードスロットがあり、奥まで挿し込んだ後に赤いスライドスイッチでロックします。

 キーボードはキーの上部を支点にして、手前側を押し下げるようにして入力する方式を採用しています。しっかり押さないと反応してくれないほか、キーボードを見ずにタイピングするのは非常に難しく、左右の人差し指や中指2本を使って入力するのがやりやすいかもしれません。

キーボードを上部から撮影してみました。キーとキーの間には余裕があるように見えますが、少し指が太い人だと押すのが難しい感じです。

 起動すると、メモリカウントの後にPC-98HAスケジューラの画面が表示され、ここから添付のメモリカードを使ってMS-Worksを本体にインストールしたり、スケジュールを記入する作業を行います。動作速度が少々もっさりとした感じなのは致し方ないとして、それを除けばロード時間を感じることもないため、それなりに快適に作業ができました。

 レジューム機能にも対応しているので、出先で進めた仕事の続きを戻ってからシームレスに行う、といったことも問題ありません。ただし、バッテリー残量を確認する手段は用意されていないため、ユーザー自ら使用時間をある程度把握しておかないと、いつの間にか電源が落ちて保存していなかった作業内容がパーに……という状況に陥ってしまうこともありました。

起動すると表示される、PC-98HAのスケジューラ画面をデイリー、ウィークリー、マンスリーと遷移させた写真です。スケジュール手帳の代わりになりますが、バッテリーの残量に気を遣わなければならないところが惜しい部分でした。

 保存した各種データは、ドッキングステーションに挿入したFDを介して98NOTEやデスクトップ98に持ち出すことができたほか、MS-DOSの知識などがあればRS-232Cインタフェースを利用しても同じことが可能です。その際には、PC-98マシンと接続するためにPC-98HA側が14ピンのRS-232Cリバースケーブルが必要となりますが、価格は4,800円でした。

 『SUPER大戦略HA』といったPC-98HA用のゲームソフトも登場しましたが、残念ながらPC-98LTと同じく本流にはなることなく、PC-98の歴史からは静かにフェードアウトしていくことになります。

付属のMS-WorksをRAMドライブにインストールすると、スケジューラ画面からF2を押すことでMS-Worksが起動します。ワープロ、スプレッドシート、データベース、そして通信という4本のソフトを選ぶことができました。このMS-Worksは上記4種類のソフトを統合したソフトで、単体アプリケーションとしては1990年9月に発売されていて価格は4万円でした。